やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
月のころはさらなり、闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。
夕日の差して山の端いと近うなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。
雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし。